環境適合型超音速推進システムの研究開発(ESPRプロジェクト) その3
このメインバーナは、これまでの記事の写真や図からわかるように予混合管(プレミキサー)と呼ばれる出口端が燃焼室に開口するダクトとその最上流部に位置する燃料微粒化ノズルで構成されます。燃料は、微粒化ノズルにおいてスワーラから流出する高速の旋回気流で微粒化され、空気流中に分散されます。この方式の微粒化ノズルはAir-blast Atomizer (Fuel Nozzle) と呼ばれます。ジェトエンジンの燃焼器の圧損率は4%前後ですからスワーラから噴出する気流の速度はマッハ数0.24程度で、ESPRエンジンの燃焼器入口空気温度916Kでは140m/sになります。なお、気象庁のデータによると、台風のときの最大瞬間風速として85m/sの記録があります。ジェットエンジン燃焼器における空気は、圧力が大気の10倍(ESPR)~50倍(最新の亜音速機用高圧力比エンジン)もあり、しかも利用できる量も多いので、燃料を微粒化するには適した環境です。
スワーラによる旋回気流は、予混合管内や燃焼室内の流れや、燃料粒子の分散が制御されます。また、乱れによって燃料の蒸発や空気との混合が促進されます。液滴は気流に乗って蒸発しながら、また、蒸気は空気と混合しながらダクト内を流れます。燃焼室に入るまでに均質な予混合気が形成されているのが理想ですが、それを妨げるのが予混合管内への逆火と予混合管内での自発点火です。
逆火は文字通り、火炎が混合気の流れに打ち勝って燃焼室内からダクト内に伝播する現象です。自発点火は、混合気が高温、高圧状態に置かれると、外部からのエネルギが与えらなくても自らの反応による熱で反応が加速し、炎を発する現象です。それらのイメージ図を示しておきます。
次回は、プレミキサーにおける逆火と自発点火について簡単に説明し、それらがどのように回避できたのか、お話ししようと思います